筆の種類も絵の具同様にたくさんあった。

筆には形があり、それは丸や平ら、猫の舌のようなものがある。

それぞれのことをラウンド、フラット、オーバルと呼び、その他にも面塗りやエッジを使って線描きもできるアンギュラーなどもあるそうだ。


水彩画は基本的に丸筆三本と平筆が一本あれば十分だと言われて、私はなぎさ先輩が勧めてくれた軸が短いものを購入した。


この筆もまた自分の身丈に合ってないことは分かっていたけれど、『色々と試して自分の手に馴染むものを見つければいい』と先輩が言ってくれたので、この筆でとりあえずは作品を仕上げることが今の目標だ。


「筆は絵描きにとっては自分の手足だから良筆を持つのはいいことだと思う。メンテナンスさえしっかりやれば長く使えるものだし、三上先輩にいいものを選んでもらったね」

詩織先輩にそう言われて、自分が褒められたわけじゃないのに嬉しくなった。

その浮かれている気持ちが表情に出ていたのだろう。すかさず詩織先輩が勘づいたように問いかけてきた。


「なつめちゃんって……三上先輩のこと好きなの?」

「……え」