心にきみという青春を描く




そして放課後になり部活に向かうと、松本先輩はすでに美術室にいた。

「先輩――」と、声をかけようとした時。私の言葉よりも早く松本先輩がガタッと椅子から腰をあげる。


「ほら、なぎさ。お前が言ってた鼻の高さを直したぞ!」

松本先輩の手には、今朝も抱えていた石膏像。


「いや、まだ低くない?あそこにあるやつを見てみなよ」

なぎさ先輩が、部屋の棚に置いてある数体の石膏像を指さした。


「お前さ、そうやって言い訳つけて逃れようとしてない?」

「うん。だって面倒くさいもん」

「いいじゃん。色付け得意だろ?」
 
「石膏像の色付けなんてやったことないよ」


なぎさ先輩がいくら断っても松本先輩はしつこく頼み続けている。今はとても天音くんのことを相談できる雰囲気じゃない。


「笹森に頼めばいいじゃん」

「水彩絵の具じゃリアルな色はムリだろ。俺は石膏像をどこまで人間らしく作れるかを探求してるんだよ!」

「そんなの知らないよ」

なぎさ先輩が困り果てたところで、その視線と目が合った。なんだかイヤな予感……。


「なつめ。アクリル絵の具やってみない?」

押し付けられるように石膏像を手渡されてしまった。


石膏像は中学校の美術室にもあったけれど、触る機会はなかったので手に持ったのはこれが初めて。想像では重たいイメージだったけれど、とても軽い。