足を止めて少しだけ顔を覗くと、そこには昨日の昼休みにパンを買わせていた男子と天音くん。
昨日は数人の男子が集まっていたけれど、その中でも一番偉そうにしていた印象がある。
いわゆるリーダー格というやつだろうか。天音くんの行く手を塞ぐようにして、高圧的な目つきをしていた。
「お前、今いくら持ってる?俺今月金欠でさ、二万くらい貸してくんない?」
盗み聞きは趣味じゃないけれど、聞き捨てならない声が耳に届いてきた。
「……ムリだよ」
天音くんがか細く答える。私には強いことを言うのに、この人の前だと天音くんはずっと下を向いていて、怯えているように見えた。
「は?俺に口答えすんの?」
「そういうつもりじゃないけど……」
「じゃあ、金出せよ。それとも殴られたい?」
どうしようと狼狽(うろた)えていると、手に抱えていたノートを廊下に落としてしまった。バサッという音にふたりが私の存在に気づく。
天音くんを脅していた男子も騒がれるのがイヤなのか、「ちっ」と舌打ちだけをして、どこかに行ってしまった。



