心にきみという青春を描く





「なつめってさ、赤ちゃんみたいだよね」

先輩が唐突にそんなことを言い出した。


「え、あ、赤ちゃんですか?」

それって幼いって意味?

中学一年生と言われたこともショックだったのに、それ以上に退化してしまうとは……。


「なんか純粋で無垢で、汚いものなんてなにも見たことがないって感じ」

先輩は裏返しになっていた画板を表側にした。
そこには完成はしないと言っていた鮮やかな青いひまわり。


「なつめはそのままでいなよ。俺みたいになっちゃダメ」


先輩が遠い人に感じるのは、背景のように描かれてるひまわりのせい?

先輩がそのまま絵に吸い込まれてしまうんじゃないかってぐらい表情が儚くて。私は思わず足を一歩踏み出す。


「な、なぎさ先輩……?」


今のは一体どういう意味ですか?

なんでそんなことを言うんですか?

尋ねる前に、ガラッと勢いよく美術室のドアが開いた。


「なぎさー!見てこれ三体目」

それは何故か石膏像に抱えた松本先輩だった。


そのあとふたりはお喋りをはじめてしまい、私はなぎさ先輩に言葉の真意を聞くことはできなかった。