心にきみという青春を描く




六畳くらいの空間にあった大量のキャンバス。
どこを見渡しても絵で溢れていた部屋にはベッドと丸テーブルだけ置かれていて、嘘みたいに絵が消えてしまっていた。


「どうしてって売ったり処分したりしたから」

「処、分……?」

私の険しい顔とは裏腹に先輩はとても冷静で。しかも絵の具が飛び散らないように敷いてあったブルーシートもなくなっていた。


「なんで処分なんて……」

以前の部屋には数えきれないほどのキャンバスがあって、見た目だけではなんの絵が描かれているか分からないものもあった。

でも処分なんてしていい絵は一枚もなかった。


先輩は足の踏み場がありすぎる床の上を歩く。
なんてことはない綺麗なフローリングでさえ、先輩の個性が消えてしまった気がして悲しくなった。


「だって、もういらないかなって」

「いらない?」

「所詮、中途半端にしがみついて描いていただけだったし」


所詮?中途半端?

目の前で喋っているのは本当になぎさ先輩だろうか。


たしかに先輩はすごい絵を描くのに自慢したりはせずに、自分の作品にはいつも後ろ向きな発言ばかりをしてた。

でも、所詮や中途半端と、絵そのものを否定するかのようなことは言わない人だった。