心にきみという青春を描く




「お邪魔してもいいですか?」

図々しいと思いながらも、ここにきた時点でそんな感情は二の次で。この機会を逃したら、私はもう二度と先輩の隣にはいさせてもらえない気がした。

先輩はきっと『ダメ』と言いかけた。

けれど神様が味方してくれているように急に外はどしゃ降りになり、アパートの通路からでも雨が強いことは確認できる。


ザアザアと激しくなる雨音を聞きながら、先輩は無言でドアノブをさらに押し出した。そして、私が入りやすいようにドアをそのまま全開にして、右手で押さえてくれている。


「……失礼します」


軽く頭を下げたあと、私は先輩の家へと入った。

私がローファーを揃えている間に先輩はリビングへと続く廊下の電気をつけた。


「タオルは?」

「ハンカチで十分なので今日は大丈夫です」

「そう」

やっぱり先輩は前みたいに強引に頭を拭いたりはしてくれない。


いつの間にこんなに距離ができてしまったのかな。

いや、距離が縮まっていると勘違いしていただけだったのかもしれない。


私は今までどんな風に先輩と話していたっけ。

それさえも分からなくなってしまうほど、先輩は遠い人になってしまった。