それから展覧会を一通り見た私たちはセントラルビルを出た。
「なあ、笹森の優秀賞で霞(かす)んでるけど、俺も賞とったってこと忘れてない?」
駅へと向かう道で、松本先輩はぶつぶつと文句を言っている。実はあのあと工芸エリアの行き、先輩が作った龍の作品には【特別賞】という紙が貼られていたのだ。
特別賞に人数制限はなく、今後の活動に期待が持てる人に贈られるものらしい。
「私、おめでとうって五回は言いました!」
「うん、なつめちゃんは偉い」
「僕も言いましたよ。一回だけ」
「うん、天音も許す。問題は……」と、松本先輩の視線が詩織先輩へと向く。
「なんですか。私だってちゃんと言いましたけど」
たしかに詩織先輩はしっかりおめでとうと言っていたし、立体的な龍をすごくよく褒めていた。でも、松本先輩が引っ掛かっているのはそこじゃないようだ。
「いや、約束だよ。賞を獲ったらデートしてくれるって言ってたじゃん!」
松本先輩の大きな声が辺りに響く。



