次に同じエリアにあったのは詩織先輩の作品。
先輩はいつもより大きなキャンバスで描いていたので、上のほうに飾られていた。
来場者の人たちはみんな歩きながら作品を見ているのに、何故か詩織先輩の絵のところでは足を止めている。
「あ……」
私はなにかに気づいた。
先輩の作品は合宿でスケッチした緑豊かな自然と、せせらぎが聞こえてくるような小川を描いた淡彩画。
本当に鼻の奥がツンとするような作品で、隣で作業しながら何度も見入ってしまった。そんな詩織先輩の絵の横には大きく縦書きされた紙が貼られていた。
【優秀賞】
そこにはそう書かれていて、私は詩織先輩の肩を叩く。
「せ、先輩!優秀賞ですよ!」
惜しくも最優秀賞ではなかったけれど、先輩の絵がいい評価をされたことの証だ。
「本当だ、ちょっとまだビックリしてるけど……。すごく嬉しい」
詩織先輩の瞳が潤んだのを見て、私まで泣きそうになる。大切な人の作品が評価されることが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
みんなが「おめでとう」と声をかけると、詩織先輩は人差し指で涙を脱ぐって満面の笑みで笑った。
そして通路を挟んで反対側に、私の作品が展示されていた。作品はそのまま【青いフルーツ】
もちろん賞などはもらえていなかったけれど、自分の作品が飾られているだけで胸がいっぱいになる。
「こういう単色で描くっていうのは勇気がいることなんだ。まあ、作品レベルはまだまだだけど、他の奴らよりは目立ってるから初めてのコンクールにしては上出来だな」
珍しく藤田先生に褒めてもらい、みんなにも『なつめちゃんらしい絵だ』と言ってもらえた。
そう、これは私がはじめて自分らしく描いた絵。自分のためじゃなくなぎさ先輩に届けたくて描いた絵だ。



