心にきみという青春を描く




そのあと私たちは部活へと向かった。美術室のドアを開けると、そこには松本先輩と天音くんのふたりだけ。


「あれ、三上先輩は?」

私の代わりに詩織先輩が問う。


「あーなんか最初だけ来てすぐに帰ったよ。どうせ美術展には参加しないし、やることもないからって」

そう言いながら松本先輩は竜の髭を必死で作っていた。


なぎさ先輩はやる気がないように見えてしまうけど、絵に対する意欲はきっと薄れていない。でも、迷ってしまうのだと思う。

描き続けていいのかどうか、自分だけ好きなことに没頭していいのかという悩みと戦っている気がする。


私はイーゼルを準備して、キャンバスを立て掛けた。


キャンバスには下絵のフルーツしか描けてなくて、今日はバスケットを重点にスケッチしようと思ってる。

細かい網目から木製の質感まで、私の技術では上手く描けそうにもないけれど、とりあえず鉛筆だけは動かしてみる。


……やっぱり難しい。

こんな時、なぎさ先輩が隣にいてくれたらと、そんな考えが頭をかすめたけれど、そうじゃないと首を横に振った。


――『モチーフを見て描いたんでしょ。それでちゃんとできてなかったらそれはなつめの力不足だよ。俺が確認したってどうにもならない』


あの時、先輩は頭ごなしに冷たく言ったわけじゃない。自分で考えろと、あえて突き離すような言い方をした。