「大きく踏み外したことがある私だから言えることだけど、失敗しないと分からないことっていっぱいあるんだよ」
先輩はあの経験をなかったことにはしていない。むしろ強く心に残したことで、先輩はさらに強くなったと思う。
「私はたぶん普通の恋愛をしてたら地獄に落ちてもいいと思うほど人を好きになれなかったと思うし。その関係をズルズルと続けていたら、私を必死で正しい道に連れてってくれたみんなのことをこんなに大切だと感じることはなかったと思う」
「……詩織先輩」
「間違いだらけの道は苦しいこともツラいことも多いけど、いつかその経験がなつめちゃんの強さになって背中を押してくれる勇気になる」
先輩の言葉が暖かすぎて、私は頬を伝う涙を何度も手で拭う。
「いくら失敗しても大丈夫。好きなことで繋がって今はそれ以上の関係になれたと私は思ってる。それはなつめちゃんがまっすぐに接してくれたから」
私も詩織先輩のことを本当のお姉さんのように思ってる。
こんなに大好きな人たちがいる部活に入ってよかった。みんなに出逢えてよかったって、心から感じている。
「まだ青春の途中。これからよ、なつめちゃん」
「……はいっ!!」
ぐちゃぐちゃになった顔で返事をした。その声は中庭を通り抜けて校舎に反響するぐらい大きかった。



