「私、大丈夫なんです。傷ついたりしてません。だから……私と仲良くするのをやめないでください」
葵が泣きそうな顔をして言った。
女子たちはきっとまた葵になにかをする。今度は上履きを隠されるだけじゃ済まないかもしれない。
どうすれば葵を守れるだろう。
どうしたら葵が悪く言われないだろうか。
「じゃあ、付き合う?」
その瞬間、時間が停止したかのように葵は動かなくなった。暫く考えるように無言になったあと、葵はなぜかムッとしている。
「じゃあ、ってなんですか。仕方なくなら、そんな優しさいりませんよ!」
「ごめん。言い方間違えた」
これは衝動的でも仕方なくでもない。タイミングは違ったかもしれないけど、葵にしか動かない感情に気づいて。それは特別なことだったんだって、ようやく実感してる。
「葵、俺と付き合って」
心臓がこんなに速くなったことはない。目の前に鏡があったらリンゴみたいに赤くなってるかもしれない。
「……はい!」
葵は涙混じりの顔で笑った。やっぱり葵も耳まで赤くなっていた。



