心にきみという青春を描く




それから数日が経って、いつもどおりの朝。学校に着いて廊下を歩いていると同級生の女子たちに呼び止められた。


「ねえ、三上くんって日向くんの妹と付き合ってるの?」

前触れもなく言われたので俺の頭はハテナマークだらけ。


「なんでそんなこと聞くの?」

「だって最近いつも一緒にいるでしょ?三上くんって、特定の人は作らないタイプだと思ってたっていうか……。今まではみんなと平等に接してる人だったから、ねえ?」と、周りの女子の賛同を煽る。


「うん。あんまり過度に優しくするとあの子勘違いしちゃうと思うよ。まだ一年生だし、ただでさえ日向くんの妹ってだけで目立つんだから」

「そうだよ。なんていうかうちらにはあの子が三上くんに媚を売ってるように見えるんだよね」

その言葉に、俺はピクリと反応する。


「みんな言ってるよ。あざといって。このままだと敵を作るだけだと思う」

女子たちは「うんうん」と頷いていて、どうやら忠告するために俺を呼び止めたようだ。


「それで、わざわざ教えてくれたの?」

「だって嫌われたら可哀想だと思って」

それはまるで自分たちが良いことをしているような口振りだった。


「そうだね。たしかに可哀想だね。俺はみんながどういう風に葵のことを思ってるのかよく分からない。でも、俺が葵のことをどう思ってるかは、きみたちには関係ないよ」


それは自分でも驚くほど低い声だった。


まさか俺が怒るとは思っていなかったんだろう。女子たちは慌てて逃げていく。

その後ろ姿を見ながら、俺はまだ腹をたてていた。


葵が媚を売っていると、あざといと言われたこと。自分が悪く言われるよりよっぽどムカついた。

怒りなんて……俺の中にはないと思ってたのに。