心にきみという青春を描く




「これ全部先輩が描いたやつですか?」

「落書きばっかりだけどね」

描いては次を繰り返していたら、いつの間にか部屋は絵の海になっていた。


「先輩は描かずにはいられない人なんですね」


たしかにそうだなと葵に言われてハッとした。三度の飯より絵を描きたいし、紙と向き合ってない時間なんて今までないんじゃないかと思うくらい。

それを『好きなんですね』と表現せずに『描かずにはいられない人』と言った葵はやっぱりさすがだと思う。


部屋の隅に置かれていた段ボールをテーブル代わりにして、なんとか座れるスペースを確保した。葵は向かう途中のコンビニで買ったお菓子を早速広げて、チョコレートを食べている。


「先輩って三人暮らしでしたっけ?」

「そうだよ。親はどっちも共働き。なんかいずれ父さんが北海道勤務になりそうだってこの前話してた」

「え、そうなんですか?」

「母さんは付いていく気満々みたい。まだ決まってもないのに北海道の本とか読んでるよ」


家族のことは今まであまり人に話したことはなかった。いや、話す必要を感じていなかったと言ったほうが正しい。でも葵の前だとすらすらと喋ってる自分がいる。


「……先輩も一緒に行く予定ですか?」

葵のチョコレートを持つ手が止まった。


「寒いの苦手だから行かないんじゃないかな」


俺は自分のことなのに他人事のような口調。

だって先のことは分からない。いつも想像力は働かせているけれど、未来を想像するのは苦手だ。