心にきみという青春を描く





葵はいい意味で、自分の作品に執着しない。

欲しいと思う人がいればすぐにあげてしまうし、もう二度と同じものは作れないというのに写真にも残さない。


俺も絵を描いている時はその作品だけに集中して時間も全部費やすけれど、完成してしまえば意識はもう次に描くものに向いてしまうから、部屋の片隅にぽつりと放置されるだけ。

だったら誰かにあげたほうが作品も幸せだろうという考え方が俺たちは同じだ。


「ありがとう。俺はお礼できるものなんてなにもないけど」

ポケットに林檎味の飴が入ってるけど、飴とこの作品じゃお礼には釣り合わない。

いつもなら『なにもいりませんよ』なんて葵は笑うのに、今日は少しだけ違う。


「じゃあ、私、先輩の家に行きたいです!」

意を決したように葵が声を張った。


「え、うち?」

そんなことを言われるなんて、まったく想像してなかった。


葵が自分のプライベートを話してくれるように、俺も部屋には引くほどたくさんの作品があると前に打ち明けたことがあったけど……。


「片してないから足の踏み場ないよ」

「つま先立ち得意です!」

「昨日は赤色の絵の具を使って飛び散ったままだから殺人現場みたいになってるよ」

「逆に見たいです!」

葵は折れる気配もなく、むしろ興奮が増しているようだった。


「じゃあ、いいよ。おいで」

「やったあ!」


本当に散らかったままだけど、葵は学校帰りにうちに来ることになった。