心にきみという青春を描く



「葵もすごい絵を描くじゃん」

「え?」

「日向のスマホケース。あれペイントしたの葵でしょ?」


日向はスマホを買い換えたので、今はそのケースは使っていない。だったら『ちょうだい』とせがんだけれど、日向はくれなかった。そこまで人の作品をほしいと思ったのは初めてだ。


「……私が作ったってお兄ちゃんが言ったんですか?」

葵は動揺というより戸惑っていた。


「聞いたのは俺だよ。衝撃だったんだ。こんなの作れる人がいるんだって」

反発し合うような色を混ぜてるのに喧嘩してないところとか。綺麗に塗ろうとしてないところとか。ムラや掠れさえも作品の味にしてしまう。


「俺、あんまり人のこと羨ましいとか思ったことないんだけど、このぐらい自分の世界観を持ってやってたら楽しいだろうなって。なんていうか、見ていて気持ちがいいんだよね。好きなことを全力でやってるんだなって。嫉妬心に近いのかな。だって俺がどんなに逆立ちしたってあんな作品は作れな……」


珍しくペラペラと口が動いたあと、ふと隣を見ると葵がなぜか泣いていた。


「……なんで泣くの?」

俺は変なことを言ってしまっただろうか。葵は大粒の涙を何度も手で拭った。


「私……そんなこと言われたの初めてです。昔から物作りは好きだったんですけど、あんまり理解されなくて。気持ち悪い色使いだって言われてから、人前ではなるべくシンプルなものを描いたり作ったりしてたんです……」


どおりで部活の時に描いてる絵は無難な静止画ばかりで、絵の具も基本的な色ばかりだと思ってた。

……もったいない。自分の個性を消してしまうなんて。