心にきみという青春を描く




美術室に行くと三年生の部員が何人かいたけれど、俺たちと入れ替わるようにして廊下に出ていった。葵はすぐにペンケースを見つけたようで、ホッとしている。

俺は部屋の隅に置かれたイーゼルの前に立ち、自分が描いている絵を確認するように布をめくった。


「あれ、それってひょっとして音楽の先生ですか?」

気づくと、葵が俺の隣に移動しにきていた。


イーゼルに立て掛けられているのはデッサン用の画用紙。濃さの違う鉛筆で描かれた先生の顔はまだ完成していない。


「一学期いっぱいで産休に入るんだって。子どもを保育園に預けられる年齢になるまでは復帰しないって言ってたし、そうなると俺は卒業しちゃうから描いてほしいって頼まれたんだ」


俺は描きたいものにしか意欲が湧かないタイプだから、頼まれるのは苦手だけど、音楽の先生はとてもいい人だから迷うことなく引き受けた。


「素敵な絵。先生の優しさが滲み出てますね」

葵は腰を屈ませて、じっと画用紙を見つめている。


上手く描こうなんて思ったことは一度もなく、その人の一番いい部分を切り取って描けたらと思ってるから、『優しさが滲み出ている』は、最高の褒め言葉だと思う。