心にきみという青春を描く



「それで、どうしたの?」

葵が変な注目をされないように、俺は呼び止めた理由を聞く。


「美術室って放課後じゃなくても開いてますか?」

うちの学校では美術は選択授業になっていて、基本的に授業がない日は放課後しか使えない。でも……。


「開いてると思うよ。コンクールが近いとわずかな時間でも作品を仕上げにくる部員もいるし、たぶん今も行けば入れるよ」

「本当ですか?実は昨日の部活の時にペンケースを忘れてきちゃったみたいで困ってたんです」


葵は俺にお礼を言ったあと、走り出す。でもまた勢いがよすぎて身体は前のめり。「わっ……」と、躓(つまず)く寸前に俺は腕を引っ張った。


「なんでなにもないところでコケるの?」

足元はただの廊下。大きな石が落ちてるわけじゃない。


「自分の足に絡まることってありません?」

「ないよ」


葵はなんていうか、猪突猛進という言葉がピッタリだ。おっちょこちょいというわけではなく、元気すぎてそのまま突っ走ってしまうのだろう。


「はあ……。しょうがないな。ほら、早く美術室に行くよ」

「え?一緒に行ってくれるんですか?」

「また足を絡ませそうだしね。タコみたいに」

「ぶっ、あはは。タコ!」


爆笑してるけど、タコはきみだよと言いかけて。それでもケタケタと子どもみたいに笑ってるから、自然と心が和んでしまった。