心にきみという青春を描く




「お兄ちゃん。絵の具って手洗い場で流していいの?」

彼女が入部してきて三日目。一年生も今日から各自で絵を描きはじめていた。


「ねえ、お兄ちゃん。聞いてる?」

無視していた日向の肩を彼女は何回も揺さぶった。……この学校で向日にこんなことできる人は彼女ぐらいだ。


せっかく妹が入部してきたというのに、日向はあまり喋ろうとはしない。俺とは喋るのに『お兄ちゃん』なんて駆け寄ってくると、ものすごくイヤな顔をする。


「流して平気だよ」

日向が答えてあげなそうだったので、代わりに俺が返した。


「ありがとうございます。えっと……」

「三上なぎさ。きみのお兄さんと同じクラス」

「じゃあ、なぎさ先輩って呼びますね!」


美術室に響き渡るくらいの声で言われて、みんなが一斉にこっちを見る。彼女は恥ずかしそうに笑ったあと、「私のことは葵って呼んでください」と、明るく言った。


本当に元気で、ひまわりみたいな子だ。