心にきみという青春を描く




そして週末が終わり、新しい一週間がはじまった。

日中の授業はそこそこに、みんなコンクールに向けての作品作りのほうが重要のようで放課後は黙々と作業をしていた。


私もイーゼルを準備してキャンバスと向き合う。

キャンバスの種類は描く絵によって決まっていて、人物はF、風景はP、海景はM、正方型はS。私が使おうと思っているキャンバスはS6号で、大きさは0号からなんと500号まであるらしい。

500号なんて部屋の壁が埋まるほどのサイズだし、描くには相当の技術と体力と時間が必要だと思うけど、なぎさ先輩ならなんだか描けてしまいそう。

部屋にあったクジラも相当なものだったし、みんなが羨むほどの才能がある先輩は部活が始まってから筆も持たずに窓のフチに寄りかかってぼんやりとしている。


――『俺はお前のこと、許してねーからな』

私が言われたわけじゃないのに、胸がヒリヒリとした。


きっと日向くんという男の子となにかあったのだろうと、みんな察しているけれど、わざわざ尋ねたりはしない。その先輩に対する空気感がとても優しかった。


「なぎさ先輩、これあげます」

私はそっと近づいて、蜜柑味の飴を差し出す。


「ん?のど飴?喉なんて痛くないよ」
 
「でもあげます」

「はは、そっか」


先輩は笑って飴を口に入れてくれた。コロコロと転がす音がして、ふんわりと蜜柑の香りが私たちを包む。


「せ、先輩。私、いつでも肩貸しますので必要な時はすぐに言ってくださいね!」

飴なんて話しかけるための口実で、本当はこれが言いたかった。


「うん、ありがとう」

先輩は再び、視線を外に向けた。


なにを見てるのだろう。それは遥か遠くのほう。

そんなに遠い場所なんて見ないでほしい。だって、このまま先輩がどこかに行ってしまいそうだから。