心にきみという青春を描く



「私、綺麗な星ってあまり見たことがないんです。だから流れ星なんて空想のものだと思ってます」

「はは、流れ星は本当にあるよ」

「じゃあ、先輩は見たことあるんですね」

「一瞬だよ、三秒ぐらい」

それでも羨ましい。空を見上げている回数は多いはずなのに、私はその三秒間に出逢えていない。


「なかなか難しいよ。俺たちの街はビルも多いし、田舎だったらしょっちゅう綺麗な星も流れ星も見られると思うけど」

「……ですよね」

ガッカリしている私を見て先輩がクスリと微笑む。


「流れ星に願いたいことでもあるの?」

「たくさんありますよ!家族の健康とか、あとは少し成績をあげてほしいです」

「なんか、なつめらしいね」


そんな話をしている内にログハウスの電気が消えて、みんな眠りについたようだ。

明かりがないぶん、一気に辺りは暗さを増したけれど怖さはない。先輩が近くにいればクマに遭遇しても大丈夫なんじゃないかって、錯覚してしまうぐらい。


ああ、やっぱり綺麗な星が見られたらよかった。

満天の星空を先輩と共有できたら、きっと臆病にならずに聞きたいことを聞けた気がして。

でもこうして夜に先輩とふたりきりになることなんて、この先ないかもしれないし、みんなが私たちのことを呼びに来ないで眠った意味もちゃんと分かってる。


「……せ、先輩は……」

言いかけた次の瞬間、「へっくしょん!」と隣から大きなくしゃみ。


「え、大丈夫ですか?」

「うーん。なんか急に鼻がムズムズしてきた」

先輩は子供みたいに鼻を擦っていて、続けて二回、三回とくしゃみを繰り返している。