心にきみという青春を描く






それから数日が経ち、今日の部活では初めてキャンバスを使って絵を描いていた。


イーゼルの前にキャンバスを立て掛けて座っていると、なんだか画家にでもなったような気分になるけれど、実際はかなり苦戦している。

下書きは上手くいったのだけれど、吸収性が良いせいかぼかしたくないところも滲んでしまって扱いが難しい。


そんな中、窓際では松本先輩が石粉粘土でまた石膏像を制作していて、別の机では天音くんは漫画を。

なぎさ先輩は盛(さか)りのついた猫のような体勢でいつものように床に画板を置いて絵を描いている。

学校の授業よりも部活がメインになりつつある私は、このみんながいる美術室が一番落ち着く。



「……はあ」 

すると、隣でため息が聞こえた。


「詩織先輩、どうしたんですか?」

先輩も私と同じようにキャンバスを使い淡彩画を描いていた。


海辺の街をイメージしているらしいけれど、本当に色鮮やかで美しい。でも、そんな絵とは反対に先輩の表情は部活が始まってからずっと暗い。



「実は健一さんと連絡がとれなくて」
 
たしかに先輩は珍しく何度もスマホをチェックしていた。


「お仕事が忙しいんじゃないですか?」

「だと思うんだけど、一週間以上連絡がないことなんて今までなかったから」 

「も、もしかしてなにかあったんじゃ……」

事故とか事件とか、あまり物騒なことは考えちゃダメだけど可能性がないわけじゃない。


「それはたぶん大丈夫だと思う。メッセージ送れば既読になるから」


先輩のこんな不安そうな顔は初めて見た。1日、2日ならまだしも一週間以上じゃさすがに心配になるよね。