心にきみという青春を描く




「最初から奥さんがいる人だって知ってた。予備校の時は指輪をはずしてるけど、外で会う時は必ずしてたから」

「………」

「でも、止められなかったの。この人となら、地獄に落ちてもいいと思えるぐらい好きになってたのよ」


きっと先輩は以前、言っていたとおり自分の全てを捧げてもいいって思えるぐらい村尾さんに心が揺れ動いたのだろう。


「……私のしてることはいけないことだって分かってる。でも、彼は約束してくれたの。最後には必ず私を選んでくれるって」

「……先輩」

「奥さんとも今年中には離婚して、必ず私と一緒になる未来を作ってくれるって言ってくれたから。まだ17歳なのに、なに言ってんだって感じでしょ?」

「そんなことないです。カッコいいです。覚悟を決めてて」


先輩の口調から中途半端な気持ちじゃないって伝わってくる。


「ふふ、でも憧れちゃダメよ。私もまさかこんな恋愛をするとは思ってなかったんだから」


先輩の恋を否定する人もいるかもしれない。奥さんがいる人を好きになり、奥さんとの別れてを待ち、もしかしたらそれで奥さんが不幸になるかもしれない。

そんなことは先輩も痛いほど理解している。けれど、どんなに自制心を強くしても止められなかった。

本気で村尾さんのことを好きになってしまったから。


「私は詩織先輩のことを本当のお姉さんのように思ってるので、先輩の未来が明るくなるように祈ってます」


頑張ってくださいとか、いつか一緒になれるといいですねとか、そんな安易な言葉は言えないけれど、私は詩織先輩には幸せになってほしい。



「ありがとう。なつめちゃんに話せてよかった」


先輩が安心したような顔で微笑むから、私のほうが泣きそうになった。