心にきみという青春を描く



『なつめ、今家?』

電話越しの先輩の声はいつもより低く感じて、それだけで胸がざわざわしてる。


「家ですよ。どうかしたんですか?」

『実は家の鍵なくしちゃって中に入れないんだよ』

「え!?」

先輩は私より先に校舎を出たから家に着いて一時間は経過してるはず。


「大丈夫なんですか?」

『スペアはあるんだけど母さんたちが持ってるから意味ないし、大家に話したら防犯対策のためにも鍵自体を新しくしたほうがいいって』

先輩は実質的にひとり暮らしだし、世の中なにがあるか分からないから、私もそのほうがいいと思う。


『でね、急いで鍵穴を工事しても終わるのは明日の昼だって言われてさ』

「……大変ですね。じゃあ、今日の夜はどうするんですか?」

『うん、だからなつめに電話したの』

「え、は、はい?」


詳しく聞くと、松本先輩の部屋はかなり散らかっているらしく、作りかけの石膏像だらけなので不可。もちろん笹森先輩に頼るわけにも行かずに、こうして私に電話をかけてきたらしいけれど……。