心にきみという青春を描く




「前に言ってたリクエストのやつです」

そういえば松本先輩にしつこくせがまれていたっけ。

迷惑そうに無視していたと思ってたのに、ちゃんと忘れずに応える天音くんの成長にちょっと感動してしまう。


「投稿する原稿が一段落したので、ついでですけど」

素直に描いてきましたと言わない天音くんは天音くんらしい。すると松本先輩が少しだけ顔を上げた。


「先輩が胸はましましにしろってうるさかったんでちゃんとしましたよ」

そんなことまで頼んでいたなんて知らなかったけど……あれ、でも待って。たしかリクエストしていたキャラクターのモデルって……。


「……はは、本当だ。すげえ上手い。ありがとう。部屋に飾るわ」と、先輩は一応笑っていたけれど、その笑顔に生気はない。


そうだ。明らかにモデルは詩織先輩だった。

普通なら絶対に大喜びするはずなのに、今は気持ち的にそうできないのだろう。


「本当にどうしちゃったんですか。週末に山でも行って毒キノコでも食べたんですかね」

天音くんが不思議そうな顔をしながら席へと戻ってきた。


なんで松本先輩に元気がないと男子は頭を打ったとか毒キノコとか、そういう発想になっちゃうのかな。まあ、それだけ先輩と傷心が結び付かないってことなんだろうけど。


「もう、サボるのは勝手ですけど、一応先輩なんですから後輩のやる気を削ぐようなうなだれかたはやめてくださいよ」

と、そこへずっと黙っていた詩織先輩がチクリ。


先輩は実質的な部長だし、なにもやらずに寝ている松本先輩に注意のつもりで言ったんだろうけど……。

案の定、傷口に塩を塗られた松本先輩は耐えられなくなり、美術室を出ていってしまった。