「直樹は海外に研修行くって昨晩飛び出して行っちゃった。」

研修…。
少し納得行かなかったが、お仕事なら仕方ない、と沙夜香は自分を納得させた。

「いつ帰ってくるんですか?」

「聞いてないから分かんないや。」

少しはぐらかすように答えた誉は沙夜香に尋ねた。

「ところで、どうして直樹がいないって分かったの?」

「夢で直樹さんが私にさようならって言ったの。だけど、お嬢様って言ってたから多分違う人だよね!」

私の思い過ごし、と頷きながら沙夜香は自分の部屋に戻っていった。

「瑠璃子!ご飯出来てるよ!」

「はーい。ありがと!」

部屋に戻った沙夜香は着替えながら瑠璃子に言った。わざと明るく。

直樹はすぐに帰ってくる。また会える。

そう思っていたから。