「・・・今夜は綺麗に見える」
部屋のベランダから夜空を見上げる。
今夜は満月だ。

「・・・おい」
「ん?」
一口、ミルクティーを飲み、羅音の方を向く。
「その格好、風邪引くぞ」
羅音は私の横に立って上を向く。
私は今、下着にTシャツ一枚の状況だ。
まだ6月で少し肌寒いが、大丈夫だろう。
「・・・お風呂、入ったばっかだから」
「そ」
羅音は夜空から私に視線を移した。

「でも、俺のTシャツ着るのはどうなの?」
確かに今私が着ているのは羅音のTシャツだ。
「ダメ?」
「いや、ダメだろ」
笑う私に即答する羅音。
「逆に、何で俺のが良いの?」
手すりに腕を乗せ、頬杖して笑う羅音。
「えー?羅音、センス良いじゃん。あと、サイズが好き」
それを聞いて羅音は少し照れた様な表情になる。
「センスはありがと」
「どういたしまして」
「で、サイズって何?」
「え?」
「俺の身長が低いって言いたいの?」

羅音は自分の身長を気にしている。
180cm程欲しいと、TV電話で言っていたのを覚えている。

今の羅音の身長は
「174cm?」
「違う」
あれ?
希と言い合っていた時に174って聞いた気がするけど・・・。
「俺は174じゃなくて、174.8だ!」
174.8cm・・・。
決して低くはない。
なのに何故気にしているのだろう。
ちなみに私は160.3cmだ。
160cmではなく160.3cm。

「羅音、私より14.5cm高い。十分高いよ。街歩いてたら、羅音よりも低い人沢山いるよ」
「だよな!?俺、高いよな!」
羅音は馬鹿なのかもしれない。
褒められて凄く調子に乗っている。
やはり羅音は本物の馬鹿なのかもしれない。