木々のアーチの中をまっすぐ進むと
僕達が泊まる旅館があった。

風情があって、セミの鳴き声も近くでして
夏らしさがあった。

コトン…
入口付近にあるだろう
ししおどしが聞こえて、都会の電車の音とは違う音に心が休まる。


愛菜はししおどしを間近で見たいと走って
駐車場から入口まで向かった。

少し坂になっているから
走っていたのに上を見ると気づいたら歩いていた。


「愛菜!気をつけるんだぞ!」

僕の心配をよそに、愛菜はししおどしを一生懸命、動画におさめてた。

「なんか、愛菜と恭也さんって
親子みたいですね!!」

笑ってはるちゃんが言うけど
さっき、運転手さんに父子家庭と間違えられたんだよなァと思った。

「春奈、それは俺達もだよ…」

拓翔くんがはるちゃんの頭をぽんぽんと触って、坂を上った。

「え?拓翔くーん!
何がー?」

そう言いながらはるちゃんは拓翔くんを追いかけた。


僕も向かおう。
愛菜の置いていった荷物も持って
坂を登った。


愛菜が置いていかずに持っていこうとしても
僕は持つよと言っただろう。

か弱い愛菜に荷物を持たすなんて…
怒る母を思い浮かべる。


それと、同時にお土産を買わなきゃと思った。