愛菜はゆっくりと話し始めた。

「さっき、恭也さんの彼女だと言う人が家に来たんです。」

みんなの視線が痛い。
泣いた原因がお前だと言わんばかりに
僕を責めている気がする。

「あ、でも本当は違くて
ただその方が恭也さんをずっと想っていただけだったんです。」

僕が責められるのを擁護するように
誤解を解いてくれた愛菜。

「その方が来た時も、どれだけ恭也さんを想っているのか聞いた時も、隣で友達が怒っている時も何も思わなかったんです。
目の前で流れることを受け入れ続けてました。

でも、1人になったら苦しくて怖くて…
それでも泣かなかったんです。
だけど、恭也さんの姿を見たら
タガが外れたように涙が止まらなくて…」


愛菜の話を聞く事しかできない僕。
なんて不甲斐ないんだろう。

すると部長が口を開いた。

「はぁーーー
なんだなんだ、お前が全面的に悪いと思ったから責めてやろうって思ったのに、責められないじゃん!」

「いや、僕がケジメをつけずになあなあにしてしまったから泣いてしまって…」

加賀くんが前に乗り出して
僕を叱った。

「だから、真面目ちゃんはダメなんだよー
女の子の扱いなってない!後輩でも分かるぞ!な?」

「いや、俺らも多分国分さんの意見と同じです。」

呆れるように部長が言った
「加賀くん、若い子は分からないよ。
経験値がないから。」


すると部長はジョッキを飲みきり
机にガンっと置いた。

「いいかい?!
まず、愛菜ちゃん!」

怒られてしまうと思って身を引いた愛菜に
優しく話した。

「君は色んなことを我慢して
人を優先してきたんだね。きっと、自覚はない。それは生まれつきなんだね。
でもね、自分の気持ちを知ることも大切だよ?」

「そして、国分!!
お前が愛菜さんにしてあげることは謝る事ではない!

愛してあげることだ。」

ドヤっと決めた部長に後輩たちがぎこちない拍手をする。
でも、加賀くんがその盛り上がりにわって入った。

「いや、部長言葉足りなくて
メインの2人困惑中っすよ!」

「え?せっかく決まったのにー」

「まぁ、部長の代弁するなら
愛菜ちゃんが国分君見て泣いたのは安心したから。この人の前なら泣いてもいいって思えたんだよ。きっと。
そしたら、国分くんがすることは言葉にして愛菜ちゃんを愛さなきゃ。

君が1番だよってね」

今度は加賀くんがドヤ顔をした。
後輩たちもおーと部長以上に盛り上がる。

納得というか理解というか
その考えが全く思いつかなかったし
正解かも分からないけど

きっと、それが正解なんだろう

愛菜は初めて何かを知れた子どものように
嬉しそうに笑っていた。
左手につけている指輪をそっと撫でて
また、嬉しそうに笑う。

横目で見ててもそれが正解だと確信をもてた。

部長を中心に盛り上がっている中
僕は愛菜をよんだ

「愛菜、えっと…」

なんて言えばいい?加賀くんのセリフよりももっと伝えたくて…

でも、愛菜は笑っていた。

「恭也さん、分かってますよ。
ずっと愛されてるって知っていましたから」