駅に着く頃には日は沈み
秋の夜なのだろうか、少し肌寒くかんじた。
駅には愛菜の姿はなかった。

理沙子って確か気が強いんだよな・・・
やっぱり、家に行こう。

そう思い向かおうとした瞬間に
人混みの向こうから
愛菜の姿が見えた。

いつもの笑顔ではなく、無理をしているような笑顔をして
手を振っていた。


「お待たせしました」

「いや、僕も今ついたところだよ
それより・・・あの・・・」

なんて声をかければいいんだ。
旦那の元カノにあったんだぞ。
動揺してるに決まってる。

考えを巡らせていたら、愛菜が口を開いた。
「恭也さん・・・」

下を向いてしまい、愛菜の顔がよく見えない。

「私、理沙子さんとお会いしても
はるちゃんが怒っていても
何にも思わなくて…」

こんな姿の愛菜は初めてだった。
一呼吸置いて、愛菜は話を続けた。

「でも、恭也さんが見えて、いろんなことを思って…
私、どうしたんでしょう」

ずっと、下を向いてた愛菜が顔を上げてくれた。
目には涙をたくさん浮かべていた。


何があったのかわからない。
愛菜の感情もつかめない。


初めて、理解できないことを悔やんだ。