俺の職業は弁護士。

つい先ほどまでいた外資系企業の顧問弁護士をしている。

そして、そこの専務に連行されたわけだ。

見た目は若く見えるが、さすがは専務という役職に就いているだけのことはある、なかなかのやり手だ。

敵には絶対したくない人物である。

隣に座る専務をチラッと見ると、スマホを取り出してメールしているようだった。

「実は今、妻と彼女が一緒に飲んでまして」

「はい」

それっきり専務は何も言わない。

『飲んでまして』の後は何なんだ?

気にはなったが、車の心地よい揺れと仕事の疲れもあって、目を閉じた。

ほんの数分で車が停止したと同時に目を開けた。

見覚えのあるホテルのロータリー。

仕事の打ち合わせや会食で何度も訪れたことがある。