慎二と咲良はいつも通りコンビニの前でしゃべっていた。

すると猛ダッシュする外国人が目の前を一瞬で通り過ぎた。

「ど、泥棒ー!」

「誰か捕まえてー!」

辺りがいきなり騒然となった。

改札口のアラームが鳴り、タッチパネルが赤く点滅していた。

数人が一斉に走り出した。

「俺のが早い。」慎二がカバンをドンと咲良に押し付けた。

「やめろ、慎二。行くな。」

咲良は今にも走り去ろうとする慎二の腕をがっしりと握った。

「俺なら追いつく。」

「ダメだ。ヤツの手にナイフがあった。光ったんだ。」

「本当か?」

「刺されたらどうするんだ。」

そうこうしているうちに数人が転びそうなくらい不安定な態勢で、バタバタと犯人を追いかけて行った。

周りではこんな声が聞こえた。

「スマホを取られたんですって。」

「電車のドアが開いたと思ったら、見ていたスマホをサッと持っていかれたそうよ。」

「それも4台も5台も。」

「GPSでわかるだろ。」

「オフにされたら分からなくなっちゃうわよ。」

「怖いわね。」

「自分だと思ったらゾっとしちゃう。」

「おちおちスマホも見てられないよ。」

「物騒になったな。」