優海の家を出て自分の家に戻る途中、海沿いの道を歩いているとき、なんとなくまっすぐ帰る気になれなくて、港のほうに行ってみた。

堤防を歩いていると、釣りをしている人が何人かいた。

私は釣りの趣味はないのでよく分からないけれど、このあたりではよく魚が釣れるらしく、夜や早朝には釣竿を持った人たちがどこからか集まってくる。

けっこう有名な釣り場としてインターネットなどでも紹介されているようで、わざわざ車に乗って遠方から来る人も多いらしい。

堤防の真ん中あたりにある外灯の根元に腰かけて海を見ていると、波立っていた心が少しずつ凪いできた。

今日の海は穏やかだ。

小さな漁船がいくつか、さざ波を立てながら沖を行く。

海鳥が空を切るように飛び、ときおり海面に飛び込んで、嘴に魚をくわえて飛び出してくる。

遠くの水平線あたりには、大きなタンカーが浮かんでいる。

止まっているように見えるけれど、近くで見たら本当はすごいスピードで進んでいるのだろう。

私たちの時間と同じように。

視線をあげて、入道雲の湧きあがる空をぼんやりと眺めていると、背後からばたばたと足音が聞こえてきた。

それから、きゃっきゃと楽しそうな笑い声。

振り向くと、幼稚園と小学生くらいの男の子が二人、追いかけっこをしながらこちらへ向かってきていた。

たぶん兄弟だろう。年の差はちょうど優海と広海くんくらいか。