父はお祭り好きで、まだ小さかった私を色々な場所に連れていってくれた。
わいわいと賑やかな人々、明るい桃燈、甘くて焦げ臭い匂い。
そして、子供のようにはしゃぐパパの顔が私の記憶の底にこびりついている。
『パパ、私これが欲しい・・』
たしか、あれは家の近くの河川敷の花火大会だったかな。
私はあるものをパパにねだった。
『赤いウサギのぬいぐるみ・・』
小さな子供の胸にはすっぽりと収まるサイズのぬいぐるみだ。
普段、滅多におねだりをしない私だが、このときはなぜかどうしてもその赤いぬいぐるみが欲しくなった。



