あたしが一ツ橋のお嬢だって枷(かせ)が。さらに遊佐を苦しめた。
 それも分かってた。

 脚が利かない自分じゃ組の要にはなれない。あたしには見合わない。
 ずっとそんな風に。 

 

 結婚してって気持ちをぶつけるだけじゃ、遊佐の救いには何ひとつならない。

 あたしにしか出来ないコト。
 あたしだから、出来るコト。


 遊佐は許さないかも知れない。
 それでもね。



 あたしは靴も脱がないままバッグの中からスマホを手に取って、アドレス帳をスクロールする。指を止めそのままタップ。耳の奥で鳴り続く呼び出し音。
 
『・・・・・・宮子か』

 繋がって静かに響いたその声に、あたしも落ち着いて返した。

「・・・仁兄。今から会える?」