あたし達の教会式は、色々と手順を変更させてもらって、かなり変則的な進行になる。

 一般的な教会式って言ったら、神父さんの話があったり讃美歌歌ったりするものなんだけど。
 せっかちで、モダンな教養は薄そうなオジサマ達には全くの不向きだ。そういう一切を省いて早々に新郎新婦が入場。お父さんと哲っちゃんの挨拶、来賓の祝辞、それから誓いの言葉と指輪の交換、退場。ライスシャワーなんてものもブーケトスも、もちろん無い。無駄にギャラリーを参加させると収拾がつかなくなりそうだって、そこはあたしも仁兄と同意見で。



『新郎新婦の御入場でございます』

 司会のアナウンスと共に扉が開く。
 パイプオルガンの厳かな調べに合わせて仁兄にエスコートされ、ゆっくりとバージンロードを祭壇に向かって歩く。
 さっと見渡しても両脇の来賓席は、ほぼ真っ黒な一団で。拍手だけがものすごい大きな音で、チャペル内に反響してる。
 前に進めば進むほど子供の頃からの顔見知りが増えてくから、まるでヤジのように左右からお祝いの声がかかった。

「お嬢!、よく似合ってるよ!」
「色男、捕まえたじゃねぇか」
「飽きたら俺がもらってやるよお嬢」

 ・・・取りあえずさ、『お嬢』はヤメよう? 式場の人ビックリするから。


 祭壇の手前まで来て来賓席に二人で向き直り、お辞儀をすると。今度は前列の一団から『お目出度う!』って野太い歓声が上がった。
 
 あたし達の両脇に、それぞれお父さんと哲っちゃんが立って「今後とも未熟者の二人をお引き立てのほど・・・」的な、襲名披露みたいな挨拶をし。
 その後の来賓の祝辞は、組の名前を出すわけには当然いかず、建設会社の代表取締役だとか、ナントカ興産、なんたらエステートってフロント企業の社名と役職で紹介された。
 結局、『お嬢、木崎!』って連呼されてるし、隠す意味は無かった気もする。

 
 そして。
 神父さんが待つ二段上の祭壇にあたしと仁兄がしずしずと進む。

『それでは、誓いの言葉を』
 
 穏やかな声が響いた。