「ねぇ、そろそろ場所変えようよ。お腹減った」


そう切り出したのは真由だった。


スマホで時間を確認してみると、昼を少し過ぎている。


「あ、俺いい店知ってるよ。パスタの店なんだけど――」


「ごめん、今日はあたしのおすすめの喫茶店じゃダメかな?」


川田君の言葉を遮って真由が言った。


その表情はおだやかで優しい物だったけれど、言葉の中にはどこかトゲを感じられた。


一瞬その場に沈黙が下りる。


「もちろん。真由のおすすめの喫茶店でいいよ」


すぐに場を取り繕う川田君。


けれどその眉間には少しだけシワが寄っている。


今まま自分のデートプランで失敗したことがないのだろう。


それを遮られた事を良く思っていないことは、見ていて理解できた。