意識不明のナギの姿を思い出すと、胸が苦しい。

ナギと会ってはいけないのはわかっている。

でも、最後に見た彼の辛そうな顔が頭から離れない。

ナギはあの時、変だと思っていたと零した。

もしかしたら、自分の置かれている状況に気づいているのかもしれない。

もしくは、気づきかけている、とか。

……会わないまま、確かめないままで、ナギのことを放っておいても大丈夫なのかな……?


「……どうするのが一番いいの」


情けない声がお風呂場にそっと響いて、湯気に溶けて消えていく。

吐き出した息が震え、私は唇を噛み締めた。

ナギの為に、何ができるのか。

何をするべきか。

ぐるぐるぐるぐる、悩んで、悩んで、悩んで。

除夜の鐘が鳴り始めても、私は答えを導き出すことができないまま、東の空が白む頃に、疲れ果て、瞼を閉じた──。