「ナ、ナギ?」


彼の隣で膝をつくと、ナギはその顔を膝の上に組んだ腕の中に隠してしまう。


「……変だと、思ってたんだ」

「変って何が?」

「気付いたら、いつもお前がいるから」

「……私?」


なぜ、私が出てくるのか。

全く話がわからず混乱していると、ナギはそっと顔を上げて私をジッと見つめて。


「なあ、お前は本物?」


本当に、わけのわからない質問をされた。


「ナギ、何の話をしてるの?」

「ごめん……凛。俺、帰るよ」

「え、ちょっと、ナギ待って。心配だから送っていくよ」


泣き出しそうな顔をして歩き出したナギを追おうとしたけれど、ヒロの自転車のことを思い出し、慌てて戻ってキックスタンドを蹴った。

そして、ナギに待ってとまた声をかけようとしたけれど。


「……嘘……」


彼は、もうどこにもいなかった。