あの橋は、どこまで続いているんだろう。

どこへ行けるんだろう。

空の上まで行けそうだ。


歩いて行けそうな気がする。

渡れそうな気がする。



渡ってみたい。







「父ちゃん、あそこまで行こう!あれ渡ろうよ!」



虹を指差した俺を、親父は声を上げて笑った。






「虹は渡れないんだ。追い掛けると逃げてしまう」

「車だったら捕まえられる?」

「車でも行けないなぁ、ずうっと遠くにあるんだ」



そう言い笑う親父は、虹を見上げている。






俺は、親父の横顔を見つめた。



遠くを見つめる瞳は気持ちの良い空気に反し、なぜか悲しそうにも見えた。







「虹は、どこに続いているんだろう」



呟く様な、親父の声。




「神様のとこだよ、てんごくって言うんだよ」



俺は、得意げに言って見せた。


意表を突かれたのか、親父の瞳が丸く象られる。




「天国なんて、よく知ってるなぁ」

「知ってるよ、それくらい」



天国の意味は分からなかった。

絵本に出ていたから思い出しただけだったが、俺は褒めてもらいたくてそう言った。