車の方を振り向くと、親父が靴を脱いでいるのが見えた。




「もう、あなたまで」


苦笑いする母さんに靴を預けた親父は、ジーンズの裾をまくりながら俺の方へと歩いて来た。






俺は嬉しくて、何だか嬉しくて。



待ちきれずに親父へと走り寄って行った。








「あんまり走ると転ぶぞ」






案の定、勢いがつき過ぎて転びそうになった俺を、親父はたくましい腕で支え、高々と抱き上げてくれた。



しっかりと抱きかかえてくれる腕に、強い安心感と温かい包容力を感じた。








親父と同じ目線で見る景色は、広く大きく映る。


まるで世界中を見渡せそうな気分に、満足感と誇らしささえわいてきた。











ふと、俺の目に、山から山へと繋がる橋が見えた。



青く広がる大空に、孤を描く七色の帯。








「ああ、虹が出ているなぁ」

「にじ?」





聞き慣れない言葉に首を傾げた。


虹を見るのは、初めてだったからだ。





想像もしなかった。

空に橋がかかるなんて。




それも、とびきり大きな七色のまぁるい橋。




.