「俺は大嫌いだ!こんな男!」


俺は、親父を指差して叫んだ。





だってそうじゃないか!

唾を吐きかけても足りないくらいだ!

好きになれるはずは無い!





五歳の時から、俺は傷付いたままだ。

母さんはもっと傷付いた。


こんな男、情けでも引き取る事には反対だったんだ。





俺の中には憎しみしか無い。






だけど、母さんが泣くから……お願いだからって泣くから……。


渋々、引き取る事に同意したんだ。



ただ、それだけが理由。



可哀相だなんて情も無い。



母さんの為に、家に入れる事を許しただけだ。





だけど……もう嫌だ!

この男の顔を見れば見る程、腹が立って落ち着かないんだ!








「こんな奴親父じゃない!こいつのせいで苦労した事、忘れたのかよ!」

「だって……可哀相じゃないの」




母さんは俺に背を向けたまま、独り言の様に呟いた。

目元をハンカチで押さえながら、遺体に添えてある古い写真を手に取り、眺めている。







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