両親からの話を淡々と聞いていた。
私は、生まれた頃から心臓に小さな穴が空いているらしい。
日常生活にはさほど支障はないし、生まれた頃はしだいに穴は塞がっていくだろうとお医者様に言われていたらしい。
でも、実際はその逆だった。
体の成長に比例するかのように穴も広がっていき、最初はなんでもなかった小さな穴が致命傷にもなる大きな穴になった。
とてもレアなケースらしく、お医者様にも想定し難いことだったそうだ。
母親はその時後悔したそうだ。
生まれた時にたとえ小さな穴でも確実な手術でうめておいてあげればよかったと。
私に残された生きる方法…心臓移植。
それが叶わなければ、25歳まで生きるのは難しいとされている。
母親は10代のうちは何も知らずに過ごして欲しいと20歳までは黙っておくつもりだったのだ。
しかし、思ったよりも進行が早くこのような伝え方になったことを母親は涙ながらに私に謝った。
「健康に産んであげられなくてごめんね。かあさんが変わってあげたらいいのにね。」
どこかで聞いたようなセリフ…
まるで、私がドラマの中の悲劇のヒロインみたい。
そうやって、どこか他人事に思うことで現実から目を背けたのかもしれない。
そのせいか、なぜだか涙は一滴たりとも頰を伝いはしなかった。

