私の声は震えた。


震えないわけない。



知ってる温もりが、私を抱き締めた。



背中腰に伝わる体温。



私はゆっくりと、後ろを振り返った。




「あ……ゆむ。


なんで?」




私、ちゃんと話せてる?


もう会えないと思ってた人。



「椎名、ごめん。



これーー大切なものなんだろ?」


私に渡すピンクのリボン。




違うよ、確かにあの時は大切だった。




けどね、リボンは返ってきても歩夢はもうーー


還って来ない。



「それじゃ意味ないよ。


リボンが返って来ても、歩夢はもうーー」




還って来ないと、口にするのが嫌だった。



知るのが、嫌だった。