中島くん、わざとでしょ



それはなんとも柔らかくて、胸の奥がホカホカ温まるような心地がした。

いつもは隙のない中島くんのガードが取り払われた。そんな感じ。



問題が解けたことよりも、こんな表情もするのかという驚きが勝って、目の前の笑顔に釘づけになった。




「上月、解けたかー?」


のんびりとした先生の声で我に返る。
「あっ、はい」と短く返事をして立ちあがった。



チョークを置くと、先生はうんうんと頷きながら、ピンクで大きく丸をつけてくれた。

それから解説が始まり、私はほっと胸をなでおろして席に戻る。




「……あの、ありがとう」


お礼の言葉をささやくと中島くんは「ん、」と
うなずいて。




「俺、すこし寝る。 これ好きに使っていいから」


教科書を私の机にスーッと押しやった。




「え、寝るの?」

「うん。 なんか、すげー眠い……の」



ぐったりとした様子でそう言うなり、頭を机に伏せた中島くん。



「え、あの……」


声をかけてみても、もう返事は返ってこなかった。



机をくっつけたまま、近い距離。
わずかに上下する肩が目の端にちらちらと映り、気が散りながらの授業になった。