「まずは下の段見て。 i を分母に含むときは、無理数の有理化と同じ変形を使う」
まさか教えてくれるとは思っていなかったから、突然のことに心臓がドキリと跳ねた。
「っ、えっと……無理数の有理化……?」
たしか前々回くらいに習ったところ。
思い出そうとするのに、ノートをのぞき込んでくる距離が近くて、思考は半分、そっちに持っていかれてしまう。
「ここに、共役複素数をかけんだよ。 そしたら分母が実数になるから、ふつうに計算できるでしょ」
トントン、と指し示して回答を導いてくれる。
「っと、つまり……aマイナス、biをかける……? ってこと、だよね……?」
確かめるように口にしても、返事はもらえず。
ただじっと、私のペンの動きを見つめているだけ。
合っているかもわからない回答を人に見られるのって緊張する。
それでもなんとか解きあげてペンを置くと。
「せーかい」
優しい声でそう言った中島くんが
口の端で小さく笑った。



