中島くん、わざとでしょ


これを解くには、前回の授業で習った知識が必要。そのためには、教科書を遡らなければいけない。



「あの、中島くん」


遠慮がちに声をかけると、相手は目線だけをこちらに寄越し。




「教科書、前のページめくってもいい?」

「……ああ。 どうぞ」



返事が来るまで間があった。
反応が鈍い。
目は合っているはずなのに、焦点が定まっていないようにも見えて。ぼんやりと虚ろな感じ。




「てか。いちいち許可とらなくていいから」

「え……でも、借りてるわけだから。半分」



ふと私の手元に視線を落とした中島くん。



「……上月、当てられたの?」

「え? ……う、うん。 問6」



私が当たってること知らなかったの?

ぼうっと頬杖をついていた中島くんは、どうやら先生の話を聞いていなかったらしい。


やっぱり今日は、どこか様子がおかしい。


けだるいため息をひとつ吐いたかと思えば、シャープペンを取り出し、芯の出ていない先っぽを私の書いた問題式の上においた。