中島くん、わざとでしょ



「っと、いや……大丈夫、です。 他のクラスに借りに行くから」

「それって “ 遼くん ” ?」

「……う、うん、そうだけど」

「べつにいーでしょ、一緒に見れば」



教科書を片手にもってひらひらと見せつけてくる。


本気で言ってるの?
これは純粋な親切心?
裏とかない?


教科書を見せるって言われただけなのにあらゆる疑念が浮かんできてしまうのは、相手が人格不安定の中島くんだから。




「中島くんは、迷惑ではない?」

「ではないね。特には 」

「……えっと、じゃあ……見せてください?」



あーもう。
口調穏やかバージョーンだと受け答えが難しい。


ガタッと立ちあがる中島くん。
机の端を持ってひょいと浮かせて、私の机にぴったり合わさる位置でストンとおろす。



中島くんが再び席につくと控えめなムスクの香りがして、距離が近いなと感じた矢先、肩が触れて、背中の筋肉が硬直した。


机が合わさった部分の中心に教科書がスライドして現れた。肩が触れたのはそのせい。教科書の上に中島くんの手が置かれてる。