先生が入ってきて朝礼が始まっても、中島くんは頬杖をついて、何も書かれていない黒板をぼんやりと眺めていた。
なにも言ってこないなら、それにこしたことはないけど
無視し合いながらお隣の関係を続けるのも、なかなか苦しいところがある。
気づけば朝礼が終わっていて、隣にばかり意識が飛んでいた私は慌てて1限目の時間割を見る。
数学。
スクバを開いて、ペンケース、ルーズリーフ、それから、─────。
……えっ。
あれっ。
手が止まる。
教科書がない。
胃のあたりがいっきにずどんと重たくなった。
もう一回端から探してみても、ない。
机の中にも入ってない。
教科書がないと、授業うけるの厳しい。
ふと、遼くんの顔が思い浮かんで、借りに行こうかな、と思った。
開始まで、あと5分弱。
なんとか間に合うかな────と
席を立ちかけたとき。
「忘れたの?」
隣から、声がかかる。
窓側の私の席の隣なんて、一つしかない。
「俺の見せようか」
目を丸くして顔を上げると
中島くんが──────優等生モードの中島くんが、無機質な目で私を見ていた。



