ここに来るまで、なにも話さなかった。
ようやく振り向いたかと思えば、無言で見おろしてくる。
ケンカをしたばっかりだから殺気立っていると思ってたのに、その目は予想と違って、不安げにゆらゆら揺れていて。
「ここら辺り、危ないって知ってんでしょ。なんで一人でうろうろしてんの」
幼い子に注意するときみたいな、優しめの口調でそんなことを言う。
てっきり「バカ」とか罵られると思ったのに。
ていうかさっきまで、荒っぽいセリフばっかり吐いてたくせに。
「ミカちゃんと寄り道して、……駅のホーム逆だから、別れた……」
調子が狂って、言葉と言葉の間がきれてしまう。
それこそ幼い子が言い訳するときみたいに。
「俺が来なかったらどうなってた?」
「……嫌なのに、夜まで一緒に遊ぶハメになった」
「能天気。そんなんじゃ済まねぇーから」
はあ、と息を落として。
一度、斜めに目を逸らされた。
「震えてたろ。 大丈夫か? 」



