頼んだレモンティーは、まだ一口も飲んでない。
こんなときに限って、なんで酸っぱいの選んだんだろうって思う。悲しさが増す。


ミカちゃんみたいに甘いの頼めばよかった。




「でも、はのんが堺井くんが大切だから離れようとしたように、堺井くんもはのんのことが大切だから離れたくなかった。……そうでしょ?」



そう言われると泣きたくなる。


うんって返事をしようとしたら、鼻の奥がツンとして、濁音がついたような、ぐもった声が出た。




「私、最低かも……自分で振っておいて、友だちでいようねって。都合良すぎるよね、だめだよね、こんなの……」


「うん。……でも、はのんがした一番最低なことは、堺井くんに言わなかったことだと思うなあ 」



ミカちゃんがため息をついた。
わずかに、怒りを含ませたため息。



「はのんが一番苦しんでたときに、苦しいって、助けてって言わずに、勝手に抱えこんで離れようとした。そこがいけなかったんだと思う」



ミカちゃんの言葉はいつだって的確。
テキトウそうに見えて、ちゃんと考えてくれてる。
我慢してた涙がじわっとにじんだ。



「だけど、はのんはいい子だから、心配かけたくないって気持ちでいっぱいいっばいだったんだよね、きっと」